ルーカス・ヒメネス・モデルの印象

この記事は04年9月に投稿した旧Hide3's Blogの記事を、加筆訂正し再投稿したものです。いまは入手困難となったオカーニャカホンのルーカスヒメネスモデルに、もう一度思いを馳せてみました。

Picture 5.jpg2004年4月上旬に、スペインはバルセロナにあるオカーニャ・カホン工房より、アルコ・カホンの青沼義郎氏(宮城県石巻市在住)へ送られてきたばかりのルーカス・ヒメネス・モデル(Modelo Lucas Jimenez)試奏の機会を、同氏のご厚意によって得ることができた。

木音志向が良く反映された同モデルは、デザインと木の質感の調和がすばらしいだけではなく、殊にノイズ音を抑える構造になっており、長い時間オンマイクで演奏しても耳への負荷が少ない。 中心を叩くと掌が沈んでいくような打面の感触で、その感触にふさわしく低音のサスティーンは深い。
ドラムスでいうと、大きな径のバスドラムにクリアーヘッド(ドラム用の合成樹脂製の皮で透明・薄目)を張ったときの鈍重さとでもいうか。

高域と低域の「ギャップ」へ対応するときのスリルを味わいながら、どういうフィールのリズムにしようかと、いわば「演奏意欲を刺激される楽器」というのが、ルーカス・ヒメネスモデルのファーストインプレッションだ。

cajon-hidemasa.JPG後日の青沼氏との電話での、その深い低音など独自の音色を創出するためのオカーニャ・カホン工房の工夫について同氏の感想は、音響知識の豊富なカホン制作者のお話だけあり大変興味深い内容だった。
ルーカス・ヒメネスモデルが、あらゆる面で愛用のカスタム・モデル(左)
とは異なることは当然ながらも、オカーニャカホン工房の響きを、あらためて実感させられたことを、最後にあえてつけ加えておきたいと想う。

 


● 記事の再投稿に際し、加筆訂正。 - 2010 Oct 08, hide3 -

どの位置を叩いたらよいのでしょうか?

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『高音域でアクセントをつけるとき打面のどの位置を叩いたらよいのでしょうか。いろいろと試していますが同じ場所を叩いているつもりでも、少しずれると音質が変わってしまい、教則CD のような一定の音色になりません。1ページ目に「高音域でのアクセントとはカホンの上部を強拍で叩く」と説明されています。この場合の「カホン上部」とは、カホン本体から手のひら半分くらいが出るくらい上部でしょうか?それとも手のひら全体がカホン本体に隠れる程度の上部でしょうか?
知人から譲り受けたカホン(国産打楽器メーカー)を使っていますが、叩く場所が変わると音が変わってしまう、なかなか難しい楽器だと感じております。』

ご質問について:高音域でアクセントをつけるときに叩くカホンの上部とは?
「カホン上部」というのは、打面の上辺から下に向かって約10センチ程度までの範囲をさします。手のひらを使わず(手のひらを打面に接触させない)、指部分までが打面に接触する範囲のことです。ご質問での表現をお借りしますと「カホン本体から手のひら半分くらいが出るくらい上部」ということになります。「手のひらが本体にかくれる」ほど深く下げるとベース音になります。演奏者の手の大きさに関係しますが、指先から第二関節、または第三関節(手のひらとの境目の関節)までの範囲を使うことで、どういったメーカーのカホンであっても標準的な高音域が得られます。

賞を盾にする人たち

本年初エントリーに、あえて古い話。教育再生会議で座長を務める野依良治氏の「塾を法律で廃止すべき」発言が問題になったのは昨年12月。森総理の頃にも有識者による「教育改革国民会議」という総理大臣の諮問機関があり、当時の座長だった江崎玲於奈氏の「将来的には、就学時にDNA鑑定をおこない入学児童を能力別にクラス分け出来るようになるでしょう・・・」のビックリ発言など思い出す。江崎氏も野依氏もノーベル賞の受賞者だが研究者としての実績に対してのことだ。ノーベル賞を盾に政治に首を突っ込んでもらいたくない。

『戦中派不戦日記』より

昭和20年(1945)5月18日(金) 朝八時半警報。
午前中、新宿駅より牛込の方へ焼野の中を歩いて見る。何処まで行っても赤茶けた焼けトタンの海。― 他の木や壁はまったく焼失せるゆえに、トタン板のみ目に立つかは知らねども、日本の家屋にいかにトタンが利用されおるかは予想外なり。木々黒々と枯れて立ち、風冷え冷えと吹けど、日は白く、見よ青き草ところどころに土陰にかなしく萌え出でたり。大いなるビルも窓枠焼けガラス熔けて、火炎内部を荒れて通りしか、黒きがらんどうの姿あたかも巨人のミイラのごとし。
山田風太郎著「戦中派不戦日記」より。

カボチャ(南瓜)宣言

朝食に湯気の上がったカボチャを食べながら「僕は、戦時中に一生分以上のカボチャを食べたからカボチャはもう二度と食べないっ!」と宣言した知り合いのご主人の話を家内がしてくれた。男に白米を食べさせようと女たちがカボチャを食べたので「女性はみんな手のひらが真っ黄色だった」と、亡父が話していたのも記憶にある。

厳しい冬を越すために外で枯れ木を拾ったが、それもすぐに尽き椅子や机など家中の家具や蔵書等も燃やし寒さをしのいだ。勿論食べる物だってろくになかったからモソモソして美味しくなかったけど粟(あわ)を長時間煮て柔らかくなったら表面の黒い灰汁を捨て食べた。お兄ちゃんは体が大きいから15個、私は10個というふうに、満州の厳冬に向かって体に脂肪分が必要と母がピーナッツを分けてくれた。そのピーナッツを食べながら、これからの季節に備えるのだと子供ながらに思った。いつもひもじかった。山田洋次氏(映画監督)の「満州引き上げ談」から。

ジャガイモ事件。食料の足しにと北海道からジャガイモを沢山送ってもらった家の話。ご飯の代わりジャガイモを蒸かし、物資のない時代に苦心惨憺しルゥーのようなのを作り、カレーライスのようにして皆で食卓を囲んた。隣家の奥さんがたまたま、その様子を二階から見ていたらしく「ほんの少しで結構ですから、お米を分けてくださいませんか」と、お願いにみえた。湯気の上がった蒸かしたてのジャガイモが「真っ白い、炊きたてご飯」に見えてしまったようなのだ。

我が家では朝食のおかずに時々蒸しカボチャがでる。その方が多く食べられるので野菜は蒸したり煮たりし食べる。カフェ・オレにシナモンを入れ、トーストと蒸したり煮たりの野菜・他というのが朝食メニューのスタイルだが、あんなに美味しいカボチャを「もう二度と食べないぞっ!」と宣言してしまうのは、よっぽどのことだろうと思えるのである。カボチャを見る度に嫌だったことや辛かったことなど、当時のことが鮮明に蘇ってしまうのだろうかと、戦争の体験がない自分にはその程度の想像しかはたらかない。その人は宣言後けっしてカボチャを口にすることがなかったそうだ。

1968

4週間前に「ビートルズ・ファッションの残り香も?」との内容で記事をエントリーしてから「あれっ・・・1968年頃ビートルズは解散してたんだっけ?」と、気になり当時の流れを辿ってみた。最終アルバムAbbey Road.「アビー・ロード」が唐突な感じで翌69年に発売されるも、ほぼ実質的活動が68年頃には終結しており、70年に解散したことを改めて確認。62年にリバプールで「ビートルズ」としてスタートしてから解散までたったの8年とは意外だった。

「ジャンル」という言葉が日本語化し定着し始めたのもこの頃でクラシック、ポピュラーを問わず種々の洋楽コンテンツが次から次へと日本へ押し寄せた。『目的のレコードをさっさと見つけ早く帰って聴きたいっ!だいたい、店内のジャンル分けが焦れったいっ!』なんて、斜に構えていた高校の頃を思い出す。良くも悪くも、世の中どこを開けても、創意に満ちた怒濤の60年代。国産シンガーソングライター草創期のキーパーソンである浜口庫之介さんの「なーみだくん、サヨナァーラ」も、この頃だった。

AbbeyRoad.jpg

「Mr. and Mrs. Smith」?

I just finished doing a Brad Pitt and Agelina Jolie movie. I was working with Alex Acun, Luis Conte and Richie Garcia. Lots of cajon on this movie. Not flashy stuff but just the three of us or four playing grooves on the cajon. I used yours and a Fat cajon and Alex had another cajon I am not sure what kind it was.

2003年12月公開の映画「ファインディング・ニモ」のサントラでアルコ・カホンが使用された事は記憶に古くないが、今年6月10日から全米公開予定「Mr. and Mrs. Smith」( Brad Pitt, Angelina Jolie, 出演 )のサントラにも、同工房カホンが再び登場する模様。

冒頭に掲載した斜体の英文は、LAのミュージシャンでアルコ・カホンを愛用するマイケル・フィッシャーさん(パーカッショニスト)から、同工房の青沼義郎さんへ送られた「録りが無事に終了」との報告メールの一部(最後の I used yours ? での太字下線の " yours " は、青沼さん製作のカホンを指す)。前述「ファインディング・ニモ」の録音前から二人の間でメールによる親交が始まり、現在も情報交換が時々行われているとのこと。因みに同工房は、海外からの注文を含め既に2000台以上ものアルコ・カホンを世に送り出している。

Alex Acuna, と Luis Conte, 両氏の使用カホンは、フィッシャーさんも種類を確認できなかったようだが、Richie Garciaさんはオカーニャ・カホンでの参加であったから(同氏は2台のオカーニャ・カスタムを所有:下Greenのポップアップで参照)、今回アルコとオカーニャ両方のカホン演奏が収録されたことになる。急いで調べた情報を基での推測の範囲ではあるが、John Powell(音楽監督?)が、カホンによる数人のリズム・アンサンブルのコンポジションを発想し、その録音トラックをパーツとしてサントラの中で採用しようという流れではないかと思われる。また、Lots of cajon on this movie. Not flashy stuff but just the three of us or four playing grooves on the cajon. との英文のニュアンスからも、なんとなく、そのようなイメージが伝わってくるようです。日本でも2005年中公開予定。

カホン工房デコラ43の新作

7194a352-s.jpg旭川のカホン工房デコラ43から新作モデル#10370が届いた。先日、同工房ウェブ・ログへの気軽な気持ちでのコメントがきっかけとなり進呈して頂いたという今回の次第ではあるのだが、そう喜んでばかりはいられない?美しいローズウッド(花梨:かりん)のボディー外観がいくら気に入ったといっても、私はカホン演奏を生業(なりわい)としているプロ。肝心要の音質的なことは、ちゃんと現物を叩いてからじゃないと当然判らない・・・。

同工房が以前よりアピールの多弦構造(8本弦)の発想について木音志向のカホン奏者としては、少々疑問もあるというのが率直で忌憚のない所なわけで・・・など、など、考えをぐじゃぐじゃ巡らせながら梱包を解き、塗装の香りも初々しいっ!その現物を叩いてみることに、・・・・・・・・?!弦の響きは驚くほど控え目だぞっ!且つ、ピアニシモのフィンガリングに難なくついてくるレスポンス。要するに、デコラ43の最新作はカホンの相反するふたつのサウンドのエレメント(ふっくらした中低域と切れの良い高域)を、同時に実現した『邪魔にならないセンシティブ弦音』のハイ・クオリティーモデルだったのです!

通常よりも低い位置を叩いたほうがサウンドホールが背板の下方にあるので、芯のある独特の低音が創出でき、嫌味のない音色なのに適度に個性的でもあり、それまでのネガティブな私の思いが一挙に払拭されるような快い「裏切られ方」だった。音域分離もしっかりしており、初心者、非力な女性演奏者からアマチュア上級者やプロまで、種々の音楽的欲求に柔軟に対応するオールラウンド・モデルとも言えるだろう。

小粋に生楽器での小アンサンブルを音量抑え目で楽しみたくなるような気持ちにさせるカホンらしいカホン。後で知ったことだが、作者の三浦さんはアンプラグドな視点で今回の新作を製作されたということらしい。ご本人の考えが充分に反映された、いわば「会心の作」ではないだろうか。

オカーニャカホンのファン・カルロス・ガリシア・モデル

オカーニャ工房からmp.3fileを久々に受信。使用モデルはファン・カルロス・ガリシア・モデルでガリシア氏自身による演奏。フラメンコ代表的リズムのブレリアス(12拍子)をタイトにキメている!同モデルの音色についてカスタム系であることなど以前のエントリーで少し触れたが、今回の音資料は同モデルのサウンドの特質やブレリアスのフレーズ内容が鮮明に聴き取れる内容になっている。全体の1/3だけアップ・ロード。

El-Espigon_short-01.mp3  0.7MB  ....  Composición de Juan Carlos García